善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

トゥルー・グリット

地震から1週間がたった。依然、福島原発の事故は予断を許さない状況で、危機は続いている。

地震では被災しなかったわれわれも、大停電の回避のため節電に努めている。それでも幸いなことに家が壊れたり、都市機能が動かなくなったりしたわけではないから、日常生活は地震の前とさほど変わらずに送っている。
被災地のことを思い、何かできることはないかと考えるが、何もできない自分に忸怩たるものがある。
しかし、友人からこういわれ、腑に落ちた。
「経済活動を停滞させないのも、被災していない人たちの役割」

だから今のところ、いつも通り仕事をやり、そうなるとハラも減るし酒も飲みたくなる。
文化への欲求だってあるから、前から予約していた国立劇場の『通し狂言 絵本合法衢』、それに神奈川芸術劇場の『杉本文楽 曾根崎心中』を楽しみにしていたが、いずれも中止になった。『杉本文楽』などは半年も前から切符を買っていたのに。

中止の理由は「(大地震による)未曾有の危機への対策が万全に行われるよう協力するため」「地震の影響を考慮し」というものだった。
ほかのイベントも次々に中止になっている。東京ドームでナイターをやるのは論外としても、なんでもかんでも自粛しましょう、中止にしましょうというのはどうかと思う。
ムダはいけないのはたしかだが、歌舞伎や文楽がムダとは到底思えない。

せめて気分転換にと、きょう封切ったばかりの『トゥルー・グリット』を観に行く。
さすがロードショー初日だけあって客は多い。でも満員にはほど遠い。客層は、中年に混じって若い人も。なぜか男ばかりで女性はチラホラ。西部劇はやはり男の世界なのか?

監督がジョエル、イーサンのコーエン兄弟、製作総指揮にスティーヴン・スピルバーグ。昔のジョン・ウェイン主演の映画のリメイクだそうで、父親を殺された少女が、2人の男とともに犯人を追う話。
ストーリーは──。
父親を殺された14歳の少女マティ(ヘイリー・スタインフェルド)は、人殺しのプロで飲んだくれの保安官コグバーン(ジェフ・ブリッジス)に犯人の追跡を依頼。テキサス・レンジャーのラビーフマット・デイモン)も加わり、かたきのチェイニー(ジョシュ・ブローリン)を追うことになるが……。

そういえば、このところよくマット・デイモン出演の作品を観る。先日もクリント・イーストウッド監督の『ヒア・アフター』を観たが、この映画も冒頭の津波のシーンが時局にふさわしくないというので中止になった。

セピア色の色調から始まり、だんだんオールカラーになっていく。
復讐を果たして、それで話は終わりとはならない。そのあとの急展開が息もつかせない。コグバーンの真の勇者ぶりに、観る方もハラハラしながら、涙があふれる。いかついアメリカ人が好きになる映画。

かえりは新宿高野第2ビル地下の「彩蕎麦 吉遊」へ。「しながわ翁」でそばがきを食べて以来、そば屋に行くと「そばがき」を注文することにしているが、この店にもありました。
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焼畑農法のそば粉で作ったというそばがき。名前も「渾身のそばがき」。命名は食い物評論家の山本益博氏だとか。焼畑のそばがきというからもっと野趣あふれる味かと思ったら、意外と上品な味。
「しながわ翁」のはそば湯に浮かべて出てくるが、こちらはそばがきだけを器に載せ、濃いめのツユにつけて食べる。お酒がほしくなって日本酒を注文。

この店のうれしいところは、2人でいって頼んだら1人前を2つの皿に分けてもってきてくれること。お酒も昼間なので1合にしたら、ふだんは1合分を1つのコップに入れて出てくるのだが、半分ずつを2つのコップに入れて持ってきてくれた。
半分といっても半分よりちょっぴり多めに入れてきてくれるのがうれしい。(それで生まれたのが落語の「もう半分」という噺だが)
もっともいつもコップにあふれさせて入れてくれるから、結局は同じ量か。