善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

小三治 うどん屋

きのうは半蔵門国立劇場へ落語を聴きに行く。

その前に西荻窪駅近くで昼メシをというので店を探す。ラーメンでも食べようと探すが、初音は休みだろうし、ハテどこにしようかと迷っていると、北口バス通り(伏見通り)沿いに「宝麗華」という店。ナント、ランチが580円というので入る。メインのほかにギョーザの点心やスープ、デザートの杏仁豆腐もついて、ごはんはおかわり自由で、けっこうボリュームたっぷり。味も素朴な感じ。
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ほかに「中国田舎料理」とかいうのがいろいろあるようだ。
中国人が家族でやっているようで、聞けば去年の12月にオープンしたばかり。何人かで行くと楽しいかもしれない。

さて本日の落語は国立劇場小劇場の特別企画公演「滑稽噺の奔流―柳派の芸をたのしむ」。
「道灌」柳家三之助
「ろくろ首」柳家三三
「笠碁」柳家小里ん
(仲入り)
「饅頭こわい」柳家喬太郎
粗忽長屋柳家花緑
うどん屋柳家小三治

やっぱりおもしろかったのは仲入り後の3人。
喬太郎はあの下品な感じに意見が分かれるところだが、真打に昇進したころから注目している1人。きょうも大いに笑わせてくれた。

予想外に収穫だったのが花緑。だいたい親の七光(花緑の場合は祖父だが)にロクなのはいないが、花緑はちょっと違う感じ。落語はまだまだヘタクソだが、聴く者をひきつける何かがある。
祖父である小さんのDNAか、育ちのよさか。伝統芸というのは一子相伝みたいなところがあるから、生まれたときから身に染みつき熟成されたものが、徐々に開花しているのだろう。

粗忽長屋」は、気の短いそこつ者と、気の長いそこつ者の噺。浅草の人だかりの中の身元の知れない行き倒れを見て、同じ長屋の熊五郎に違いないと思い込んだ八五郎熊五郎を引き連れて死骸を引き取りにいく。
そのやりとりが、いかにも現代っ子の会話という感じで、おいおい、いつの時代の話だよと思わずツッコミを入れたくなるが、聞いているうちにちゃんと江戸時代ふうというか落語の世界になっていく。将来が楽しみだ。

トリは本日のお目当て、小三治の「うどん屋」。いつも独演会ではまくらを延々とやるが、きょうはあっさり、それも定石通りの「屑屋は小声で呼ばれると掘り出し物にぶつかる」という話。本日は柳派の集まりだから遠慮があったのだろう。

うどん屋」はもともと大阪の噺を3代目小さんが移入したもの。うどん屋が酔っぱらいに絡まれるあたりは大阪のほうがおもしろいが(というか上方落語の「住吉駕籠」に同じシーンがあり、笑わせる)、小三治の芸の真骨頂はうどんを食べるところ。
風邪を引いて、ようやく治りかけたらしいお店(たな)の若い衆が鍋焼きうどんを注文し、フーフーいいながら食べる。おつゆも全部飲みきったところまでを演じるのだが、扇子1本で食べる様子を、客席のわれわれは生唾を飲み込みながら見入る。そんな光景、なんか落語会全体が滑稽な感じもするが、小三治の食べる様子の見事さといったらない。

きのうはたまたま春のような陽気だったが、あれが雪の降るような寒い日だったら、きっと帰りにはみんな、そば屋かうどん屋に直行し、鍋焼きうどんを注文したに違いない。