善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

等伯展の見どころ・その1

今度の展覧会は没後400年を記念した大回顧展。
おそらく空前絶後でしょう。
「信春」と名乗った七尾時代の画業初期から、
上洛後、画壇に地位を占める晩年まで、その生涯をたどっていて、
仏画、障壁画、水墨画などあらゆるジャンルの等伯画を結集しています。
もともと等伯能登の畠山家家臣の奥村家の子として生まれ、
染色業を営む長谷川家に養子に入りました。
そこで絵に開眼して、最初は「信春」と名乗っていましたが、
菩提寺が法華(日蓮宗)だったことから熱心な信者となり、
日蓮宗寺院に関する仏画をいくつか描いています。
30代で上洛した後も、熱心な法華信徒として活動していますが、
ちょうど京では「町衆」と呼ばれる人々が自治組織を築いていて、
町衆の多くは法華だったといいます。(なんと上京の人口の6割は法華だったといわ
れる)
法華は芸術家たちにも浸透し、
狩野元信、本阿弥光悦俵屋宗達尾形光琳なども法華信者でした。
等伯も、もちろん揺れ動く時代の真っ只中にいて、
等伯が上京したのは室町幕府が滅んで安土・桃山時代を迎えるころ)
法華信者として町衆やほかの芸術家たちと親交を深め、
その才能を開花していったのでしょう。
やがて秀吉や千利休らに気に入られ、一躍時代の寵児になっていきました。
重要文化財三十番神図」(富山県の大法寺蔵)は27歳のときの作品。
法華経の守護神である三十番神が精緻に描かれていて、
色彩鮮やかなのは、はつらつとした若さゆえか。
各神像の背景には手長猿なども見え、のちの水墨画へとつながっているといわれてい
ます。