善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

師走の餅つき

日曜日の昼間、イッパイやってサテこれからゴハンというとき、近所に住む友人宅から「今、餅つきしているんだけど、食べに来ない?」とのお誘い。
かけつけると、何とこの家には自前の杵と臼があって、毎年暮れになると餅つきをしているんだとか。

奥さまの談によると、結婚して初めてご主人の家を訪れたら、いきなり「これから餅つきするから手返しをお願い」と言い渡され、「手返しって何?」と戸惑いつつ、嫁として「できません」ともいえずに、何も知らないまま餅つきの手伝いをさせられた、というから、餅つきはこの家の伝統行事であるに違いない。
ちなみに「手返し」とは、餅つきのとき、臼の中の餅を手でこね返すこと、また、それをやる人のことをいうんだとか。

そうやって結婚ウン10年、ご主人が杵を振りおろし、手返しする奥さまとの呼吸もピッタリで、見事に餅がつきあがった。
普通の餅から黍入りの餅もあって、大根おろし、納豆、粒あんなどにまぶして食べる。つきたて餅のうまいこと!
蕎麦と餅とビールはつきたて、できたてに限る。
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それにしてもこの家の臼も杵も立派なこと。
餅をつくときは力まかせではなく杵の重さを利用する、とはよく聞くが、この家の杵はとてつもなく巨大で、これならいい餅ができるのも当然だろう。

ペッタン、ペッタンという威勢のいい音が冬の澄み切った空に響く。そこで落語の「尻餅」を思い出した。

晦日だというのに餠屋も頼めない貧乏所帯の夫婦。女房は、せめて近所の手前、音だけでもさせてほしいという。そこで能天気な亭主は、自分が餅屋になって、景気よく餠屋に餠をつかせている芝居をしようとかみさんにいう。
いやがるかみさんに着物をまくらせ、手に水をつけてお尻をペッタン、ペッタン。
(この音が噺家の聞かせどころ)
そのうちお尻は真っ赤になって、がまんの限界を超えたかみさん、「あの餠屋さん、あと幾臼あるの?」「へい、あと2臼です」「後生だからあとの2臼はおこわにしとくれ」
ちょっと艶っぽい噺で、戦時中は禁止落語の1つだったとか。

そういえば昔は、餅つきは師走の風景だったな~。
おいしい日曜日だった。