善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

カンヒザクラ咲く

水曜日朝の善福寺公園は快晴。強い北風が冷たく、冬に戻ったような寒さ。

 

上池のカワセミは、けさもオスとメスが離れたところにとまっていた。

池のほとりにはオス。f:id:macchi105:20210224095221j:plain

遠くのロープの上にメス。f:id:macchi105:20210224095241j:plain

 

池をめぐっていると、モズのメス。f:id:macchi105:20210224095308j:plain

モズの見返り美人の図。f:id:macchi105:20210224095330j:plain

小川ではハクセキレイf:id:macchi105:20210224095357j:plain

キセキレイは近づくとすぐに逃げていくが、ハクセキレイは鷹揚というか、動じない。f:id:macchi105:20210224095429j:plain

逃げ足に自信があるからか。それとも人懐っこいのか。

 

カンヒザクラ(寒緋桜)が咲き始めた。f:id:macchi105:20210224095450j:plain

善福寺公園ではまずカワヅザクラが咲き、そのあと咲くのがカンヒザクラだ。

旧暦の正月あたりに咲くことからガンジツザクラ(元日桜)とも呼ばれる。

沖縄では1月末ごろに「日本一早いサクラの開花」が話題になるが、このサクラはカンヒザクラ。温暖な沖縄ではソメイヨシノなどの生育が難しく、サクラといえばカンヒザクラなのだ。

 

ヤナギの木の高いところからコンコンコンと幹をつつく音が聞こえる。

目を凝らすと、アオゲラが幹を登りながらコンコンつついていた。f:id:macchi105:20210224095601j:plain

やがて首を伸ばしてあたりをうかがい、遠くへ飛び去った。f:id:macchi105:20210224095625j:plain

至近距離でをつついているのはコゲラf:id:macchi105:20210224095649j:plain

つつくのに夢中になっているから近くに寄っていってもまるで平気だった。f:id:macchi105:20210224095712j:plain

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このところ地面に降りているツグミが多い。f:id:macchi105:20210224095813j:plain


下池を1周して上池に戻ると、さきほどのオスとメスのカワセミか。

今度は多少は近づいている。

風に吹かれてメスのカワセミf:id:macchi105:20210224095849j:plain

オスはというとジッと水面をにらんでいる。f:id:macchi105:20210224095942j:plain

首のあたりがまるでカウボーイのスカーフみたいにヒラヒラ揺れている。f:id:macchi105:20210224095913j:plain

公園から出ようとしたら、これもさっきモズか。

朝日に照らされていた。f:id:macchi105:20210224100011j:plain

 

帰宅途中、善福寺の向こうの北の方角に細長い雲が、地面と平行に帯状になって伸びている。f:id:macchi105:20210224100048j:plain

何という雲だろうか。

地震の前とあとにあらわれる「地震雲」は帯状というが、まさか、ね。

きのうのワイン+映画「哀愁」「メトロポリス」ほか

イタリアの赤ワイン「ヴェネト・ロッソ・アンターレ(VENETO ROSSO ANTALE)2017」

(写真はこのあと豚ステーキ)f:id:macchi105:20210223103055j:plain

アンターレは、北イタリアのロンバルディア州コモ地区で1895年設立の長い歴史を持つ家族経営のワイナリー。

ブドウ品種はコルヴィーネ、メルロ。

深いルビー色で、調和のとれた味わい。

 

ワインの友で見たのはNHKBSで放送していたアメリカ映画「哀愁」。

1940年の作品。

監督マービン・ルロイ、出演ビビアン・リーロバート・テイラー、ルシル・ワトソン、バージニア・フィールドほか。

 

原題は「WATERLOO BRIDGE」。

ウォータールー橋はロンドンのテムズ川に架かる橋の名前。

第一次大戦下のロンドン。陸軍大尉のロイ(ロバート・テイラー)とバレエの踊り子マイラ(ビビアン・リー)は、空襲のさなかウォータールー橋で出会う。

互いに強くひかれ合った2人は結婚の約束をするが、その直後にロイは出征となり、やがてマイラのもとにはロイが戦死したという知らせが届く・・・。

愛し合いながらも戦争によって引き裂かれてしまう悲恋を描いたメロドラマの名作。

ビビアン・リーロバート・テイラーが2人とも若くて美しくてハンサム。

前年の「風とともに去りぬ」では強く、激しく生きていく女性を演じたビビアン・リーが、この映画では一転して薄幸のか弱い女性を演じている。

だが、あまりにも悲しい物語。

 

今や大阪・通天閣の名物ともなっているビリケンの人形が、幸せを呼ぶマスコットとして登場している。

 

日本では「蛍の光」として知られる「Auld Lang Syne」が随所で流れる。

ロバート・テイラー演じるロイはスコットランドの名家の御曹司で、この曲はスコットランドに古くから伝わる民謡であり、準国歌的な曲という。新年とか何かの披露宴、誕生日などで歌われ、欧州議会がイギリスのEU脱退をめぐる協定案を可決したとき、議員らは総立ちになってこの曲を大合唱したという。

 

ところで、「蛍の光」は「Auld Lang Syne」のメロディーに日本語の歌詞をつけたもので、明治のころ、外国の歌に日本語の歌詞をつけて小学唱歌とした一連の曲のひとつだが、もうひとつ、まるでそっくりな曲に「別れのワルツ」がある。

実はこれも原曲は「Auld Lang Syne」で、古関裕而編曲によるもの。ただし、よく聞くと「Auld Lang Syne」とも「蛍の光り」とも違っていて、原曲が4拍子なのに対して「別れのワルツ」はワルツだけに三拍子。「蛍の光」が明治時代から歌われているのに対して、「別れのワルツ」ができたのは戦後になってから。

映画「哀愁」は日本では1949年に公開されて大ヒット。「ウォータールー橋」を「数寄屋橋」に置き換えて菊田一夫作の「君の名は」がラジオで流れ、放送中は銭湯がガラガラになったといわれるほど、こちらも大ヒットしたが、映画の中で流れた曲をワルツにアレンジしてレコード発売しようと、コロムビアレコードが専属作曲家だった古関裕而に編曲を依頼。「古関裕而(こせき・ゆうじ)」の名前をもじった「ユージン・コスマン楽団」による「別れのワルツ」としてリリースされた。当時の人々は外国録音のレコードと信じて疑わなかったとの逸話が残っている。

「別れ・・・」というだけあって、パチンコ屋とかデパートなどで閉店時間になると流れるBGMがこの曲だ。

 

ついでにその前に観た映画を紹介。

民放のBSで放送していたアニメ映画「メトロポリス

2001年公開の作品。

監督・りんたろう、脚本・大友克洋、音楽・本多俊之

 

手塚治虫の同名漫画「メトロポリス」をアニメ化。

ケンイチ少年とその叔父、私立探偵ヒゲオヤジこと伴俊作は、人とロボットが共存する大都市メトロポリスへやって来た。生体を使った人造人間製造の疑惑で国際指名手配されている科学者ロートン博士を逮捕するためだった。

メトロポリスは「人とロボットの共存都市」といわれていたが、実際にはロボットたちが人間に酷使されていた。一方、労働者たちもロボットに働き口を奪われ、都市の地下部に押し込められ、ロボットに憎しみをたぎらせていた。

ヒゲオヤジとケンイチは、ロボット刑事ペロの手助けを借りて、ロートン博士が潜伏していると思われる都市の地下部ZONE1へと潜入する。そこでケンイチはナゾの少女と出会う。彼女はメトロポリスの実権を握るレッド公の亡き娘・ティマに瓜二つだった。そうとは知らないケンイチは彼女を連れ脱出を図るが・・・。

 

ケンイチやヒゲオヤジ、ロック、ランプなど、手塚作品によく登場する懐かしい顔が出てくる。

原作の「メトロポリス」は1949年(昭和24年)、手塚治虫が20歳ぐらいのときの作品。やっぱり“マンガの神様”は天才だ。

 

民放の地上波だったかで放送していたアメリカ映画「ソードフィッシュ

2001年の作品。

原題も「SWORDFISH」。直訳すればメカジキのことだが、かつてアメリカ麻薬捜査局の実際にあった極秘捜査に「ソードフィッシュ作戦」という大規模なおとり捜査があり、このとき犯罪組織のマネーロンダリングのためのニセの口座が開設された。捜査は複数の大物政治家、銀行幹部などを含む一斉検挙が行われて幕を閉じたが、今も秘密裏に巨額のカネが銀行に眠っているという設定で、ハッカーがそのカネを奪おうと争奪戦を演じる物語。

 

監督ドミニク・セナ、出演ジョン・トラボルタ、ヒュー・ジャック、ハル・ベリーほか。

 

映画のクライマックスに、大型バスを乗客ごと吊り下げる奇妙な形をした巨大ヘリが登場して度肝を抜かれるが、「エリクソンS-64〝スカイクレーン〟」というホンモノのヘリらしい。

コブシの花咲く

火曜日朝の善福寺公園は快晴。日差しは暖かいがときおり強い風が吹く。

 

公園の春は繁殖期を迎えたカワセミだけではない。

ハナダイコンの花が咲き始めていた。f:id:macchi105:20210223092913j:plain

ユスラウメも1輪だけ咲いていた。f:id:macchi105:20210223092936j:plain

いつの間にかコブシの花も1輪、2輪と咲いている。f:id:macchi105:20210223092958j:plain

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トサミズキもツボミをふくらませていた。f:id:macchi105:20210223093039j:plain

 

上池のカワセミはどうなったか?

けさも、気を引こうとしているのか、メスが盛んにピーピー鳴いている。

オスはジッと池を見つめていて、エサ獲り優先か?f:id:macchi105:20210223093125j:plain

そばにメスが飛んできた。f:id:macchi105:20210223093149j:plain

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場所を変えてはオスの近くに来て、しきりに鳴いていたが・・・。f:id:macchi105:20210223093236j:plain

やがて2羽は遠くに飛んで行った。

 

こちらも散歩を再開し、下池へ。

小川ではけさもキセキレイf:id:macchi105:20210223093404j:plain

見上げるとコゲラがギーギー鳴きながら幹を登っていく。f:id:macchi105:20210223093435j:plain

カメが日向ぼっこ。f:id:macchi105:20210223093510j:plain

早春の朝は太陽が横から差してくるので、カメも縦になって光を体いっぱいに浴びようとしている。

 

カイツブリも動かずいたが、やっぱり日差しがうれしいのか。f:id:macchi105:20210223093535j:plain

満開のカワヅザクラの花の蜜をヒヨドリが吸っていた。f:id:macchi105:20210223094224j:plain

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ヒヨドリ、やっぱり蜜が大好きなメジロ同様、クチバシが細長く舌が長いことに加え、舌の先端部分が細かく分かれて筆のようになっていて蜜をなめ取りやすい構造をしているので、花を散らすことなく蜜をなめることができる。

おかげで花粉媒介もしてくれるので、カワヅザクラにとってヒヨドリはうれしいお客さん。いくらでもなめさせてあげよう。

 

ツグミがミミズをゲットし、すぐに飲み込む。

北へ帰る日が近いのか、望郷のポーズ。f:id:macchi105:20210223094339j:plain

再び上池に戻ると、やっぱりメスがピーピー鳴いているが、そばでオスはジッと水面を見つめたまま。

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やにわにダイブして小魚をゲット。

さては獲物をメスにプレゼントするか、と期待してみてたら、すぐに飲み込んでしまった。f:id:macchi105:20210223094422j:plain

やっぱり色気より食い気?

カワセミの“恋バナ” ついに!

月曜日朝の善福寺公園は快晴。きょうも朝からポカポカ陽気。

 

まずは上池をめぐっていると、カワセミが2羽、並んでとまっていた。f:id:macchi105:20210222101430j:plain

相変わらず距離があんまり縮まってないように見えるんだが・・・。

 

上池から下池へ。

こちらではだいぶ前にペアが成立したというウワサを聞いたが、その後、しばらくカワセミの姿はなかった。

けさは、オスのカワセミが1羽でとまっていて、ツイーッと池をまわり込んで飛んで行った。f:id:macchi105:20210222101504j:plain

オスのあとを追って行ったわけではないが、いつもの散歩コースを歩いていくと、池のほとりの石垣にメスがとまっている。f:id:macchi105:20210222101530j:plain

向かいの池の上の杭にはオスの姿。さきほどのオスだろうか。f:id:macchi105:20210222101601j:plain

メスはオスの気を引こうとしているのか、少しずつ場所を移動してアピール。f:id:macchi105:20210222101624j:plain

やがて並んでとまった。f:id:macchi105:20210222101645j:plain

すると、また離れたところに移動し、何とメスは石垣に斜めにとまっている。f:id:macchi105:20210222101742j:plain

オスにアピールしているのか?

また近くにとまった。ジッとオスを見つめるメス。なんか一途な感じ。それに対してオスの冷たい視線。f:id:macchi105:20210222101829j:plain

やがて2羽でツイーッと飛んで行った。

 

こちらも再び散歩コースを歩いていくと、さっきの2羽がまたとまっている。

しかも、今度は積極的なのはオスのほうで、ジッとしているメスのそばを盛んに行ったり来たりしている。

さっきのオスの冷たい?素振りは恋の駆け引きだったのか?f:id:macchi105:20210222102042j:plain

そして、やにわにメスに近づくと・・・。f:id:macchi105:20210222102107j:plain

いつに交尾開始!f:id:macchi105:20210222102133j:plain

朝の強い光を浴びてハレーションを起こしているが、これはこれで神秘的でいいかも?f:id:macchi105:20210222102152j:plain

その間、数秒だったが、やがてメスから離れたオスは遠くに飛んで行った。f:id:macchi105:20210222102224j:plain

1羽、残されたメスはしばらくそのままジッとしていた。f:id:macchi105:20210222102250j:plain

見ているこっちもついドキドキしてしまったが、結婚成就よかったね。

 

見上げるとエナガが忙しくエサ探し。f:id:macchi105:20210222102315j:plain

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先日みたのと同じようなところにけさもモズのメス。f:id:macchi105:20210222102416j:plain

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このあたりがテリトリーのようだ。

 

小川ではキセキレイ。このところ毎日のように姿を見せる。f:id:macchi105:20210222102459j:plain

ヒヨドリがウメの花の蜜を吸っていた。f:id:macchi105:20210222102524j:plain

ふたたび上池に戻ると、カワセミのオスがポツンととまっていた。f:id:macchi105:20210222102555j:plain

うーむ、気になるのはこっちだなー。

 

 

カワセミの“恋バナ”第4幕

日曜日朝の善福寺公園は快晴。気温高くポカポカ陽気。

 

いつの間にか、公園のジンチョウゲが咲いていた。f:id:macchi105:20210221094842j:plain

甘い香りが漂っている。

 

池に近づくと、上池ではけさもオスとメス、2羽のカワセミがご対面中。f:id:macchi105:20210221094906j:plain

しかし、先日以来あまり進展はないみたいで、互いに距離を保っている。

それでも次第に近づいていく。f:id:macchi105:20210221094931j:plain

とうとう横に並ぶ。f:id:macchi105:20210221095104j:plain

やっぱり積極的なのはメスのほうで、盛んにピーピー鳴いている。

ついに声が裏返ってすごい鳴き声。f:id:macchi105:20210221094954j:plain

しかし、結局2羽は別れて飛んで行った。

 

池をめぐっていると、葉っぱの陰に隠れるようにしてカワセミが1羽。オスのようだ。f:id:macchi105:20210221095212j:plain

メスのアタックから逃れてきたのか?

うーん、普通は逆だと思うんだが。

 

さらに池をめぐっていると、またまた2羽のカワセミが並んでとまっている。

さっきよりは距離が離れているが、こちらはオス。f:id:macchi105:20210221095238j:plain

とすると、さっきの葉っぱの陰に隠れていたのがすぐにこっちに飛んできたわけじゃなさそうだから、このオスは別のオスで、上池には2羽のオスのカワセミがいるのか?

こっちはメス。やっぱりメスのほうが鳴いて訴えてるみたい。f:id:macchi105:20210221095309j:plain

やがて2羽とも飛び立って、メスがとまった上をかすめるようにしてオスが飛び去って行った。

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ハテ、上池には2組のペアがいるのだろうか?と深まるナゾ。

首をひねりながらも散歩を続ける。

 

けさも太い木の幹にメジロがとまっていて、ときどきキョロキョロしながら、しきりに幹をつついていた。

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小川にはキセキレイ。いつも近づくとすぐに逃げていくのだが、けさは割と近くまできてくれた。

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地面に降りてエサ探し中のツグミがこっちを見てる。f:id:macchi105:20210221095603j:plain

藪の中ではアオジが移動中だった。f:id:macchi105:20210221095650j:plain

下池を1周してふたたび小川のほとりを歩いていると、さきほどのキセキレイがまだいてくれた。

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葉っぱを裏返したりして、まるで遊んでるみたいだった。f:id:macchi105:20210221095831j:plain

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再び上池に戻ると、メスのカワセミが1羽だけ。f:id:macchi105:20210221095951j:plain

飛び立ったかと思ったら、池をぐる~っとまわりながら飛んでいる。

さっきのオスを探しているのかもしれなかった。

冥途の飛脚 勘十郎・忠兵衛、勘彌・梅川にホロリ

国立劇場小劇場での2月文楽公演は、勘十郎見たさに第3部の「冥途の飛脚」へ。

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前回行ったとき、客席は歌舞伎座と同じ席を前後左右に空けて市松模様みたいにしてコロナ対策を行っていたが、きのうは1列に2つ席を続けて1つ席を空けてというふうに変わっていた。最前列と太夫が座る盆回しの前が空けてあるのは従前通り。

 

全三巻のうち上演されたのは「淡路町の段」「封印切の段」それに「道行相合かご」。

太夫・三味線は小住太夫・清丈、織太夫・宗助(淡路町)、千歳太夫・富助(封印切)ほか。人形は勘十郎の忠兵衛、勘彌の梅川ほか。

勘十郎の忠兵衛はさすがのうまさ。勘彌の梅川もよかった。特に忠兵衛を転落一歩手前で思い止まらせようとする梅川の「くどき」の場面。思わずホロリと涙が出て、千歳太夫浄瑠璃もいつもの声を張り上げるだけでなく情がこもっていて、三味線と合わせ太夫と人形との三位一体とはこのことか。

目の前に、舞台ではなく300年前の大坂・新町の廓の情景が広がっていて、梅川忠兵衛の悲劇を目の当たりにしているようだった。

 

近松門左衛門の代表作の1つ。初演は正徳元年(1711)、門左衛門59歳のとき。

大金を動かす飛脚問屋の養子・忠兵衛が遊女・梅川と恋に落ち、店で預かっていた御用金の封印を切り、梅川を身請けしてしまう。封印を切ってその金を流用すれば公金横領となり打ち首獄門の大罪。2人は手に手を取って逃げるが・・・。

 

この物語には悪人は登場しない。すべて善人ばかりだ。それなのになぜこんな悲劇になってしまうのか――。

 

物語は・・・。

大坂・新町の遊女梅川と馴染んだ飛脚問屋亀屋の忠兵衛は、梅川を田舎客と競り合って、友人八右衛門から預かった50両を身請けの手付金に流用。八右衛門は、地に頭を擦りつけての忠兵衛の懇願に応え、善意で返済の猶予を与える。

忠兵衛のことを心配した八右衛門は、梅川との恋に溺れた忠兵衛がこれ以上ハメを外すことのないようにとの親切心から、茶店で遊んでいた遊女たちの前で忠兵衛の窮状を暴露して、寄りつかせないようにしてくれと頼むが、それをたまたま戸口で立ち聞きしたのが忠兵衛だった。

八右衛門の気持ちなど知らない忠兵衛、男の面目をつぶされたとカッと頭に血がのぼり、懐に持っていた武家の屋敷に届けるはずの300両の封印を切って、その金で八右衛門の金を返し梅川を身請けしてしまう。

自分が身請けされた金が公金横領の金と知り梅川は驚き、忠兵衛もわなわなと震え出すが、もはやこうなったら2人で死ぬか逃げるしかないと、忠兵衛は梅川を連れて生まれ故郷である奈良の新口村に向かっていく。

 

近松門左衛門作のこの作品は歌舞伎でも「恋飛脚大和往来」と改作されて上演されているが、原作では友人思いの善人の八右衛門が、歌舞伎では梅川に横恋慕する悪人という設定になっている。

勧善懲悪にすることで忠兵衛への同情心をかき立てて観客受けをねらった改作だろうが、原作のほうが人物描写がリアルだし、今日にも通じる誰もが陥りやすい人間の弱さを描いていて、実際にあった事件を元に描いているので時事性もあり、松本清張の社会派ミステリーみたいな趣もある。さすが近松門左衛門

 

結局のところ、忠兵衛が転落していくのは誰が悪いのでもない、悪いのは忠兵衛の心の弱さ、すぐに頭に血が上ってしまう気の短さ、ヘンな男のメンツなのだ。

だが、そうとわかっていても、見ているうちになぜかそんなダメ人間・忠兵衛がいとおしくなる。それはなぜか。忠兵衛が梅川をどれほど愛しているかがわかるからだ。

 

手にした300両という大金を、そのまま届けるべきところ(武家屋敷)に持っていこうか、それとも自分が身請けてしくれるのを待つ梅川のところに行こうかと、行きつ戻りつ逡巡する「羽織落とし」で有名な場面では、「ひょっとしてあれは自分では?」と忠兵衛に自分を重ねて見てしまう。

 

梅川のくどきのセリフも胸に迫る。

「大坂の浜に立っても、あなた一人は養って、男に苦労はかけないから堪忍しておくれ」と、短気は損気と涙ながらに訴える梅川。

「大坂の浜に立つ」とは、ムシロ1枚持って川端で客を引く最低辺の遊女になるということである。誰のせいかといえば私のせいなのだから、どんなに落ちぶれたっていい、だからどうか気持ちを静めて、と訴えてても、目先の恥と、男のメンツしか頭にない忠兵衛はガマンならなかったのである。

 

茶屋に集まっていた遊女の前で、禿がかつて新町にいた夕霧太夫の物語を今の自分たちに重ね合わせて三味線を弾きながら語る浄瑠璃の文句がいい。

「傾城に誠はなしと世の人は言うけれど、それはみんなひがごと(僻言)、恋を知らない人の言葉です。誠も嘘も元は1つ。命を投げ打って誠を尽くしても、男のほうから便りもなくなり遠ざかっていけば、どんなにこちらが思っていても、傾城の身ではどうにもならない。思わぬ人に身請けされ、思う人にかけた誓いも嘘となる。

はじめはただ偽りの、仕事だからと逢う人も、逢っているうちにこの人こそ頼りと思うようになれば、はじめの嘘もみな誠。恋路に嘘も誠もあるものか。縁のあるのが誠です」

何て一途な思い。近松門左衛門作の浄瑠璃「遊君三世相」(1686年)に出てくるもので、門左衛門が34歳のときにつくった浄瑠璃の一説という。

 

歌舞伎や人形浄瑠璃の多くがそうであるように、この話も実話にもとづくもの。

実説によれば、駆け落ちした忠兵衛と梅川は捕らえられて、忠兵衛は千日前の刑場で処刑。梅川は生き延びて、江州矢橋(滋賀県草津市矢橋町)の十王堂で50有余年の懺悔の日々を送り、近くにある浄土宗清浄寺に葬られたと伝えられている。

奈良県橿原市新口町の善福寺本堂の前には忠兵衛の供養墓がある。墓は「南無阿弥陀仏」と刻まれ、追善のため後世に建てられたものといわれる。

また、清淨寺には梅川の墓があり、享年八十三 梅室妙覚信女、と刻まれているという。

ようやく見つけたよ アカハラ

土曜日朝の善福寺公園は快晴。風が冷たい。

 

公園をめぐっていると、すぐ目の前でメジロが木の幹とか枝にとまっていた。f:id:macchi105:20210220095424j:plain

さらに歩いていくと、今度はウグイス。

やっぱり木の幹に取りついている。f:id:macchi105:20210220095507j:plain

虚みたいなところをつついている。f:id:macchi105:20210220095527j:plain

中に隠れている虫をねらっているのか。

 

その後はクマザサの中を移動して、葉っぱが揺れるので中にいるのはわかるが、まるで姿は見えない。

あきらめて散歩を続ける。

 

下池をめぐっていると、アオサギが首を伸ばして、ピクリとも動かずにエサをねらっていた。f:id:macchi105:20210220095559j:plain

池を1周してもまだそのままの姿勢でいた。粘り強いアオサギ

 

ムクドリが獲物をくわえてあっち行ったり、こっちにきたりして忙しく歩き回っている。f:id:macchi105:20210220095633j:plain

近くに別のムクドリもいて、どうやら獲物を独り占めしようとしていて、そうはさせじとほかの鳥たちもおこぼれに預かろうとしているようだ。エサをめぐる鳥たちの攻防。

 

ヒヨドリが1羽、スックととまっていた。f:id:macchi105:20210220095657j:plain

珍しいヒヨドリの立ち姿。

 

公園を出ようとしたら、前方の地面にいた鳥がすばやく枝に飛び移った。

シロハラに似ているがおなかが赤い。アカハラのようだ。f:id:macchi105:20210220095737j:plain

すぐに飛び去って行ったが、これまで何度か見かけたものの今シーズン初めて写真撮影に成功。

 

冬にこのあたりで越冬する大型のツグミ類としては、ツグミシロハラアカハラる。

ツグミシロハラはシベリアあたりの海外で夏をすごし、冬になると暖かい日本にやってくる。一方、アカハラは夏は北海道や北日本の高山帯にいて、冬になると南の方にやってくる(一部は海外からもくるみたいだが)。

それなら、遠く海外からやってくるツグミシロハラはめったに見られず、国内組のアカハラは数が多くてよく見るかというと、善福寺公園ではツグミシロハラはよく見るのにアカハラはめったに見られない。

 

不思議に思って調べてみたら、2013年の国立科学博物館附属自然教育園のデータだが、同園においてもかつてはアカハラシロハラと同等以上の出現率や生息数だったが、その後、アカハラシロハラの3分の1ぐらいに減少してしまったという。

その原因のひとつとして、自然教育園ではかつて存在していた開けた場所や林縁が、その後、樹林化して全体的にアカハラの好む環境からシロハラの好む環境へと変化していったことがあげられるという。

繁殖期のアカハラは「明るい林」に生息し、「明るい開けた場所を好む」とされる。越冬期のアカハラの生息環境も、繁殖期と共通する条件があるのかもしれないというのがその理由だ。

同じようなことが、善福寺公園も含む他の地域でも起きているのかもしれない。

急激な高密度化した宅地化や農地の減少によって、アカハラが好む「明るい林」や「明るい開けた場所」がどんどん少なくなっているためなのだろうか。

もうちょっと調べてみたいテーマではある。